言事堂の日記帖(2023.4-)
2023.8.11
8月になると、広島や長崎の原爆のことを思い出す。一昨年、広島の平和記念資料館を久しぶりに訪れた。館に向かう途中、爆心地からほど近い周辺の街を歩きながら、学徒動員のため建物疎開の作業をしていた中学生たちが全員亡くなったという地点に行き着いた。足元をじっと見つめて真横の川に視線を移すと、何十年も前のあの日がいまこの時にやってきたように眩しかった。展示を観た後、原爆ドームと、本当の爆心地とされる路地にも立ち寄った。街中そこかしこに、展示の中で見たひとたちの記憶がちらばって目に入ってきた。忘れてはいけない。
言事堂の店内でも戦争関連の資料や書籍があります。手にとっていただけたら。
前回の日記の後に『長野県人名鑑』(信濃毎日新聞社)が入荷。こちらにはちゃんと藤森成吉や武井武雄、野村千春の名前も見つけて一安心。今度からは『信州人物誌』と両方引いてみようと思う。
暑い日が続きますが、熱中症に気をつけてみなさんお過ごしください。お水と塩が大事です。私はもっぱら塩分チャージというタブレットを摂取中。
2023.7.24
店頭と出張の買取で本がどんどん集まってきて、廊下に山積みになっている。アルバイトの及川さんにリスト作りをやってもらっていても間に合わない。掃除、値付けと管理で一日が過ぎていく。そういう仕事とわかっていても途方にくれてしまう。仕入れの中に面白そうな本を見つけて頁をめくるのが何よりの楽しみではある。
夏休みの子どもたちに向けて、自由研究の参考になりそうな児童書を店頭にどんどん出します。均一本にするのでのぞきに来てください。藤森成吉の著作本もまとまって35冊入荷しました。
郷土史の仕入れのたびに知らない人物名が出てくるのでそのたびに開いている本が『信州人物誌』(信州人物誌刊行会)。人名ごとの索引もありとても重宝している。武井武雄や藤森成吉が掲載されていなくて?というところもある。名取洋之助の記載があって、なんでだろうと思っていたら、岩波写真文庫からの出版があるかららしい。なるほど。長野ではかつて全37巻からなる『長野県文学全集』という(地方での文学全集の刊行巻数では一番じゃないかと思う)書籍が刊行された。長野にきて驚いたことの一つがこの文学全集だったのだけれども、それだけ長野と関わる作家・著述家がたくさんいるということだ。古本屋の勉強は続く。
2023.7.7
七夕。 昨日。朝早くにoldeのみさとさんから電話あり。言事堂の向かいで火災が発生しているとのこと。慌ててお店に向かうと、斜め前の民家が全焼していた。まだ火の手が見えていて、焦げた匂いが言事堂の店舗内にも充満していた。規制線が外される気配がなかったので、急遽臨時休業にした。お店のことが心配で訪ねてくださった方々もいて申し訳なかった。延焼でもしていたらと思うと、ずっとちむわさわさー(本当にぴったりの言葉だ)して落ち着かなかった。火は本当に恐ろしい、すべてを奪うのだ。
鎌倉の出版社『港の人』の上野さんと井上さんがご来店。いつも直接注文をしていて、諏訪に来てからも本を送ってもらっていた。お会いするのは今回が初めて。なんでも、塩尻に梅を狩りに来たとのこと。温泉にもこれから向かうそう。諏訪に引っ越してきてから、出版社や編集者の方たちが訪ねてきてくださるのでとても嬉しい。
2023.7.4
6/27から7/4まで沖縄で過ごしていました。沖縄本島北部のやんばるに住んでいるkittaさんが藍染の染料作りをするというので、見学とお手伝いに出かけました。琉球藍の畑で茎から刈り取り、水を張った藍甕に刈り取った藍を沈めて55時間ほど待ちます。三日後には水に葉の染料が溶け出していて緑と青が混ざった玉虫色にも似た藍色に変化していました。ここに石灰を混ぜ、人の手により40分間休まず攪拌。さらに深みを増した藍の色に感動。忘れられない体験となりました。作業のお手伝いに20名ほどの人が集まっていたので、みんなで交代でこの作業を行いました。合間においしいご飯も堪能できて、久しぶりに友人たちとも再会できて、とても思い出深い8日間となりました。はじめてのひとりお店番をしてくれたスタッフ及川も4日間がんばってくれました。さあ仕事に戻ります。